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大阪高等裁判所 昭和35年(く)83号 決定

少年 K(昭一八・三・二八生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の理由は、本少年は昭和三五年七月二九日少年鑑別所を出所してから、その数日後再び麻雀屋の支配人と喧嘩したために、鑑別所に入れられたものであるが、少年は現在かかる不祥事について全く改心し、父母に対しても改心の情を表示しているのである。将来に希望を託している未だ年少の本人及び父母の心情を酌量して寛大なる裁判を下されたく、原決定の取消を求める、というのである。

よつて本件少年保護事件記録及び少年調査記録を精査すると、本少年は、昭和三三年九月○○商業高等学校一年生の時学業を放棄して中途退学し、父の反対を押し切つて一時大阪市南区心斉橋筋○丁目の喫茶店「○松」にボーイとして働くうち、次第に不良化し、昭和三四年四月頃からは大阪南の暴力団D会に入り、その幹部○井○雄方に寝泊りしていたものであるが、その間(1)昭和三四年五月一九日午後八時半頃Tと共謀して大阪市南区難波新地○番丁○番地の「○○○茶屋」店内でS・Yの二少年を恐喝して同人等をしてそれぞれ腕時計一個・現金四〇円を交付せしめ、(2)同月二五日午後九時半頃同南区心斉橋筋○丁目の喫茶店「○松」の三階ホールで同店の店員M(当時一八歳)の態度が生意気だと同人の顔を手拳で殴り(3)昭和三五年五月三一日午後一〇時半頃Bと共謀して南区難波新地○番丁の麻雀屋「○○クラブ」の店員G(当時二八歳)を同店からその附近の喫茶店「○○ミ」に連れて行き、同所で同人に因縁をつけて恐喝し、よつて同人をしてその翌日出金することを約束させたが、同人がこのことを苦にして睡眠薬を多量に飲み自殺を図つたため、金銭喝取の目的を遂げず、(4)同年六月一三日午後一一時半頃Nと共謀して南区難波新地○番丁○○番地の「××××食堂」前路上で停車中の白タク運転手W(当時二六歳)に「ここで商売するんであれば百円出せ」など言い、同人をその車外に引き出すなどして、同人をして畏怖せしめて、百円を交付させた、以上四つの罪につき、昭和三五年七月二九日大阪家庭裁判所において試験観察に付せられ、同日釈放せられたところ、日ならずして、またまた同年八月一三日午後一〇時半頃南区難波新地○番丁の麻雀屋「○○クラブ」の店でD会会員Cに加勢して同人・R及び本少年の三人で同店の支配人A(当時三二歳)に対して殴る蹴るの暴行を働いた、原決定の認定した事実が認められるのである。そして本少年は気分にむらがあり、感情的になりやすく、移り気で、不良剌戟に対する親和性が強く、安易な考え方、不真面目な生活態度は依然として矯正せられていないのであり、取り調べ官の質問に対しても素直に真実を語つていない点もあり、また本少年の家庭における保護能力にも疑問があるのであつて、本件非行事実そのものは特に兇悪・重大なものではないが、本少年の環境調整と性格矯正とのためには収容保護の措置も止むをえないものと認められるのである。したがつて原裁判所が少年を中等少年院に送致する旨を決定したことはその処分が著しく不当とは認められないから、少年法第三三条第一項、少年審判規則第五〇条により主文の通り決定する。

(裁判長判事 奥戸新三 判事 塩田宇三郎 判事 青木英五郎)

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